ほのぼのミステリー?お正月におすすめしたい一冊「和菓子のアン」

明けましておめでとうございます。

新しい年を穏やかに迎えられたことと存じます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

なんて言っているうちにももう3日が過ぎようとしているのですね。

 

あなたはどんなお正月をお過ごしでしょうか。

①大切なご家族と賑やかに

②一人だけの自由で快適な時間を堪能

人の数だけ新年の迎え方はありますから。

何だか昔のCMのコピーみたいですみません(笑)

さて、①の方、もうそろそろ少しでいいので自分ひとりの時間が欲しいなんて思い始めていませんか?

そして、②の方はパソコン、テレビ、スマホ三昧で、ブルーライトに目をやられていませんか?
(ハ○キルー○かけてるから大丈夫!という方はごめんなさい)

どちらのあなたも、久々に確保できたこの貴重な時間を利用してしばし本の世界に浸ってみるのはいかがでしょう。

ここでは、肩が凝らずにさらっと読めて、まるで冬の陽だまりのようにほんわかと心が温まり、ついでにお正月疲れもとれそうな・・そんないいことづくめの一冊をご紹介したいと思います。

『和菓子のアン』

それが本のタイトルです。

思わず笑顔になってしまう表紙

「読んでください」といいながらネタバレするのはご法度だと思うので、差しさわりの無いところで、まず表紙からご紹介しますね。

真っ白な背景の真ん中にでん!と座っているのは、ほんのり薄紅をさしたようなまあるい愛らしいお饅頭。

小ぶりだけどほどよく甘い餡子がたっぷりで手のひらに載せるとずっしり重たい。

そんな目を惹く表紙の本のタイトルは、

『赤毛のアン』ならぬ『和菓子のアン

フォントもとても可愛くて思わず手にとってしまったある日の午後の本屋さん。

その時の私はきっと笑顔になっていたはず。

 

お腹が空いてたんじゃない?

 

まあ、それも正解っちゃ正解ですけど!

すみません、話を進めますね。

作者

作者は坂木司さん。

本書カバーのプロフィールによると、

1969年東京生まれ。2002年『青空の卵』でデビュー。引きこもり探偵・鳥井真一とその人間模様を描いたデビュー作を含む三部作で高い評価を得る。他の著作に『切れない糸』『ワーキング・ホリデー』『ウインター・ホリデー』『ホテルジューシー』『シンデレラ・ティース』『夜の光』『短劇』などがある。

この中では『ホテルジューシー』も読みました。

これもテイストは違いますが、少し辛口のなかなか面白い作品でしたよ。

面白いと言えば、坂木さんは読者に先入観を与えないためという理由で性別を非公開にしているとか。

ううむ・・・そここだわらなくてもなあ、と思うのですが。

 

坂木さんの作品の基本スタイルは「主人公の成長」「日常の謎」だそうです。

本書もまさにそのとおり、ミステリーをからめたアンの成長物語といってもいいでしょう。

ミステリー?

2011年「心に残った本ランキング」の第1位に輝いた本らしいのですが私が読んだのはつい数年前のことです。

「デパ地下を舞台にしたほのぼのミステリー」というキャッチコピーがついていますが、

 

「ほのぼの」と「ミステリー」ってどう考えてもリンクしそうにないけどなぁ

そう思いますよね。

ではここでこれまたざっくりとあらすじをご紹介。

名前である杏子の杏の字と、まあるい大福みたいな見た目からアンと呼ばれるようになった彼女は高校卒業後も自分の進路が定まらず何となく消去法で職場を選んでしまう、ぽっちゃりで食いしん坊でお人好しの女の子。

勤務先は地元のデパートの地下の食料品売り場(いわゆるデパ地下)にある和菓子屋さん。

そして初出勤のその日から、男勝りの店長、仕事も出来てイケメンの乙女系男子社員、可愛いけど実は元ヤンのバイト女子大生というキャラの濃い面々に囲まれたある意味非日常な毎日がスタートするのです。

年頃の女の子らしく容姿にコンプレックスを持ち、繊細で落ち込みやすく思い込みも激しいアン。

何だか少女マンガにでもありそうなゆるくて平和でありきたりなストーリーと思われそうですが、

 

でもミステリーなんでしょ?

そうですね。ミステリーなんです。

そのミステリーの数々は坂木さんの基本スタイルである「日常の謎」=「事件」として、彼女の働くデパ地下の和菓子屋さんもしくはその周辺で起こります。

世間知らずでお人好しだけど下町育ちの気風の良さと正義感を持ち合わせているアンは、目の前にたちはだかる疑問や理不尽な出来事を見過ごすことができません。

時には心を折られそうになりながら、時には勇ましく?その「謎」に正攻法で立ち向かっていく姿はユーモラスでありながら健気です。

そしてひとつの「謎」が解けるたびに人の心の深いところにある切なさや悲しみ、ささやかな喜びや願い、そんなものがじんわりーと姿を現してきて思わず胸が熱くなるのです。

まるで師匠が無骨な手で作り上げた練り切りの中からとろりと流れ出す蜂蜜のように・・
(詳しくは本書をお読み下さい)

和菓子~桜餅

もうひとつの主役

和菓子といえば、バターや生クリームをふんだんに使ってデコレーションも華やかな洋菓子と違いなんとなく地味でおとなしめ。

どちらかといえば、お年寄りの好むお菓子というイメージをお持ちではないでしょうか。

作者の坂木さんも本書のあとがきで書いてらっしゃいますが、次の作品でデパ地下を舞台にしようと決めてはいたものの、「和菓子」に目を向けたのはほんのきまぐれだったそうです。

洋菓子にちなんだミステリーは数あれど、和菓子をテーマにしたものはないからじゃあこれで!という発想だったらしいです。

そこで色々和菓子についての文献を紐解いてみたら、まるで日本の歴史を学ぶがごとく、様々な謂れや物語で満ちていることに気づかされ、これはまるでミステリーじゃないか!ということになり、この作品が生まれたのですって。

 

あくまでもミステリーでいきたかったのですね。

 

そう、この本の主人公はもちろんアンなんですけど、同じくらい存在感のあるのは何と言っても

和菓子

まさにもうひとつの主役。

 

ミステリーにからんでいるのでここでは内容はふせますが、とにかく和菓子の描写が秀逸です。

本当に目の前の和菓子を手に取り、眺め、ゆっくりと味わっているのが私自身なんじゃないかと思うぐらいアンの「食レポ」が素晴らしい。

さしつかえの無いところで一例をあげてみますね。

まずは『雪竹』。ふんわりとした薯蕷(じょうよ)まんじゅうの生地は、純白の雪のイメージ。そして端にそっと描かれた竹のモチーフは、鮮やかな緑。~中略~細かい気泡を抱え込んだ生地はどこまでも軽く、そして中の餡は少しだけ塩の効いた粒あんになっていて、その組み合わせが絶妙だ。

ね、すぐにでも本を閉じて近所の和菓子屋さんに駆け込みたくなったでしょ。

 

師走のクリスマスでさんざんケーキを味わったあなた・・・

年の瀬になりそして新年を迎える頃には何となく「和菓子」にシフトしていく気持ちが少なからずあるような気がしませんか。

どっしりとした大福やどら焼き、そして上品なお茶菓子に至るまで、「寿ぐ」という言葉がなぜかしっくりくるのは気のせいでしょうか。

豆大福

 

さて、お正月も三が日が過ぎようとしていますが、新しい年はまだ始まったばかり。

心穏やかにそしてあらたな目標を持って明日に進みだすために、この本はあなたにほんのちょっぴりでも勇気をあたえてくれることと思います。

そして読み終わった後は、本のページをめくる前とは比べものにならないほど優しく穏やかな気持ちとともに、驚くほど和菓子とデパートの裏事情に詳しくなっている自分に感動することでしょう。

 

これぞ和菓子ミステリー。

おすすめです。

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